『年利率4.0%』と書かれた商品が、実は通帳に違う数字を残す。1000万円を年4%で30年運用したとき、年複利の満期額は約3,243万、月複利は約3,313万、日複利は約3,320万。同じ『4%』のラベルの下に70万円・6万円という差が静かに積み重なる。本記事では『複利頻度(周期)』の一段が30年満期額のどこに入り、日米欧の表示慣行がどこで分かれ、そして頻度が『預金では小さく、借金では大きく育つ』非対称性を素直に並べてみる。
『表示年利率』と『実効年利率』 — 同じ4%が二つの意味になる場所
銀行のチラシに『年利率4.0%』と書いてあるとき、その4%は二通りに解釈される。
| 表記 | 正式名 | 意味 |
|---|---|---|
| 表示年利率(名目) | APR (Annual Percentage Rate) | 1年に単純換算した表面金利。頻度を無視 |
| 実効年利率 | APY (Annual Percentage Yield) | 頻度効果まで含む『本当の1年の利回り』 |
同じ名目4%でも月複利なら実効4.074%、日複利なら4.081%。**広告に書かれる数字はほぼ常に名目(APR)**で、実効(APY)は約款の細字に入っていることが多い。米国は1991年 Truth in Savings Act 以降 APY 義務表示。日本は『表示年利率(税引前)』が標準で、実効年利率は別途案内事項。貸金業法では『実質年利率』表示が義務(債務側のみ)。
interest ツールで『複利頻度』トグルを切り替えると、同じ4%入力が『実効4.074%(月)』『実効4.081%(日)』に即時換算される。
1000万円・30年 — 三つの頻度を一表で
元本1000万、名目4%、30年満期。同条件で頻度だけ変えた場合。
| 頻度 | 満期額 | 総利息 | 実効年利率 |
|---|---|---|---|
| 年複利 (1回/年) | 3,243万 | 2,243万 | 4.000% |
| 月複利 (12回/年) | 3,313万 | 2,313万 | 4.074% |
| 日複利 (365回/年) | 3,320万 | 2,320万 | 4.081% |
| 連続複利 (∞) | 3,320.1万 | 2,320.1万 | 4.0811% |
『年→月』の差は約70万、『月→日』の差は約6万、『日→連続』の差は約2,000円。頻度を一段上げるごとに差が約10分の1に縮むパターン。つまり本当に意味のある一段は『年複利 → 月複利』で、その先はほぼ同じ場所に集まる。
頻度を上げるほど収束する理由 — e^r という天井
数学的には元利金の公式は P × (1 + r/n)^(n×t)。n を無限大に飛ばすと P × e^(rt) に収束する。r = 0.04、t = 30 なら e^1.2 ≈ 3.32 だから 1000万 × 3.32 = 約3,320万が『理論上到達できる最大値』。
| 頻度 n | 30年満期額 | 天井(連続)対比 |
|---|---|---|
| 1 (年) | 3,243万 | 97.69% |
| 4 (四半期) | 3,300万 | 99.41% |
| 12 (月) | 3,313万 | 99.80% |
| 52 (週) | 3,319万 | 99.95% |
| 365 (日) | 3,320万 | 99.99% |
頻度が12を超えると既に天井の99.8%に達するため、『日複利適用』広告は満期額ベースでは『0.2%余分』以上にはなりにくい。天井そのものが e^r で塞がれている構造。
日米欧の頻度表示慣行
三市場は『何を広告に書かせるか』が違う。
| 市場 | 標準表示 | 義務項目 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 🇯🇵 日本 | 『年利率X%(税引前)』 | 表示年利率、利払方式 | 単利が基本、複利は別記。実効表示は弱い |
| 🇺🇸 米国 | 『APY X.XX%』 | APY 義務表示(TISA 1991) | APR と APY 並記が一般 |
| 🇰🇷 韓国 | 『年利率X%(単利/月複利/年複利)』 | 約定金利、満期支給方式 | 実効収益率は別案内 |
日本のネット定期で『年利率0.30%』とだけ書いてあるとき、頻度を確認しないと実効が0.30%なのか0.305%なのかわからない。米国 HYSA が広告で『5.00% APY』と書くのは義務、日本のネット定期が『0.30%』とだけ書くのは慣行。
頻度が本当に意味を持つ場所 — リボ払い・カードローン
預金で頻度が生む差は『1000万を30年で6万円』程度だが、債務では正反対に効く。同じ名目金利で頻度が増えるほど『返すべき金額が早く膨らむ』構造。
| 債務 | 表示(APR) | 日複利時の実効(APY) | 表示・実効差 |
|---|---|---|---|
| クレジットリボ(平均) | 15.0% | 16.18% | +1.18%pt |
| クレジットリボ(上限) | 18.0% | 19.72% | +1.72%pt |
| カードローン(消費者金融) | 18.0% | 19.72% | +1.72%pt |
| 闇金法定上限 | 20.0% | 22.13% | +2.13%pt |
同じ『APR 18%』でも日複利が明示されていれば1年後に返すべき金額は18%ではなく19.72%だけ増える。頻度が小さくなる場所(預金)では得が0.2%程度だが、頻度が増える場所(債務)では損が約2%ptに育つ非対称性が頻度トグルの本当の意味。
投信積立で頻度はどう見るか
日本の投資信託の『分配金再投資』は実質的に『分配タイミングごとの複利』。年1回分配の長期インデックスは年複利、毎月分配型は月複利相当。NISA でつみたて型インデックス(月1分配再投資)を30年運用すると、年1分配型より約2〜5%多く積み上がる。ただしこれは『複利頻度』というより『分配タイミング』の話で、運用利回り自体が変わるわけではない。同じ年率5%なら結局 e^(0.05×30) = 約4.48倍が天井。
| 商品 | 頻度の意味あるか |
|---|---|
| 普通預金1年 | ほぼなし(0.001%×差は1円) |
| ネット定期1年 | 小さい(1000万で約7,000円) |
| ネット定期3年 | 中(1000万で約10万円) |
| 投信30年運用 | あり(1000万で数十万円) |
| リボ・カードローン1年 | 大きい(借金100万で1〜2万円) |
ツール — 頻度トグル一つで曲線比較
interest ツールは『複利頻度』を年・月・日で即時切替。1000万・30年・4%の入力で切り替えると、3本の曲線がほぼ重なる中、満期額ラベルで70万・6万単位の差が見える。比較パネルを開いて左に『ネット定期(年複利)』、右に『リボ払い(日複利)』を並べると、『預金では小さく借金では大きい』頻度の非対称性が一画面に収まる。
覚えておくべき一行はシンプル — 『同じ4%でも頻度の一段が30年で70万円』。そしてその70万円の90%は『年→月』の一段から出る。日複利・連続複利は広告では華やかに見えても満期額の差は数千円〜数万円、外食一回分。本当に気にすべき段は『年複利か月複利か』、そして『この頻度が借金にも適用されているか』の二つだけ。私の複利曲線を描くで、トグル一つでその二つの場所を正直に確かめてみよう。