「年4%のドル預金なら、6か月でいくら増える?」と聞かれたら、答えはドルと円で変わる。ドルの利息は計算できても、円に戻した後の金額には為替レート、売買時のコスト、税が重なるからだ。このページは銀行の金利ランキングでも「今ドルを買うべき」という提案でもない。1万ドルを例に、何を確認すれば数字を読み違えないかを順番に見ていく。
2026年9月27日の更新:旧版にあった2026年5月の銀行別金利・スプレッド、1ドル156円を現在相場とする表現、「外貨は資産の10%」「160円超なら慎重」といった根拠のない一律の目安を撤去しました。以下の4%・156円・片道1円はすべて架空の計算条件です。税の説明も「20万円まで非課税」と誤読されないよう改めました。
まず、利息だけなら200ドル
仮に1万ドルを年利4%で6か月預け、単利で月数比例の概算をすると、利息は 10,000 × 0.04 × 6 ÷ 12 = 200ドル。これは税引前であり、4%は特定銀行の現在の募集金利ではない。実際の利息は適用金利、日数計算、商品条件、端数処理で変わる。
日本国内で支払われる通常の預金利息について、国税庁は20.315%の源泉分離課税を案内している。当サイトのツールで「税引後」を選ぶと、このモデルでは利息200ドルから40.63ドルを引き、159.37ドルとして計算する。これは利息にだけ税率を掛ける簡略化で、為替差益の税額や個別の端数処理まで算定しない。
円に戻すと、同じ利息でも結果が違う
次は売買コストを含めない理論表。買付と売却の比較用レートをそれぞれ1ドル156円、表の売却レートとし、元本を156万円と置く。「税引後」は利息に20.315%を適用した場合で、為替差益に関する税は計上していない。表示額はPiPiの外貨預金シミュレーターの計算ロジックと照合した。
| 6か月後の比較用レート | 税引前の円換算額 | 利息のみ源泉徴収後の円換算額 | 元本156万円との差(源泉徴収後) |
|---|---|---|---|
| 158円(2円の円安) | 1,611,600円 | 1,605,180円 | +45,180円 |
| 156円(変化なし) | 1,591,200円 | 1,584,862円 | +24,862円 |
| 154円(2円の円高) | 1,570,800円 | 1,564,543円 | +4,543円 |
| 151円(5円の円高) | 1,540,200円 | 1,534,065円 | −25,935円 |
2円の円高なら利息があっても、源泉徴収後の増加分は約4,500円。5円の円高ではマイナスになる。為替相場の予測ではなく、同じドル利息に対する感度を見る表だ。ドルのまま使う予定がある人と、満期に円へ戻す人では「円換算額」の意味も異なる。
売買コストを入れると「相場横ばい」でも違う
円でドルを買う時のレートをTTS、ドルを円に戻す時のレートをTTBという。銀行の重要事項説明にも、両レートと基準レートの差が為替コストになると書かれている。次の片道1円は特定銀行の実際の手数料ではない。コストが数字に及ぼす影響を見る架空例だ。
- 基準レートを買付時・売却時ともに156円と仮定する。
- 片道1円のコストを置くと、実際の買付レートは157円、円転レートは155円。1万ドルを買う円の支出は1,570,000円。
- 利息のみ源泉徴収後の
10,159.37ドル × 155円は1,574,702円(円未満を四捨五入)。円での差額は約4,702円。
コストなしの横ばい例では差額が24,862円だった。同じ「為替横ばい」でも、往復コストを仮に片道1円ずつ入れると差額は大きく縮む。現実には銀行・会員区分・通貨・取引時点でTTS/TTBが異なるため、契約前に両側の実際の提示レートを確認する必要がある。外貨預金は為替変動や為替コストで円ベースの元本割れがあり、預金保険の対象外である点も、円預金と同じ感覚で扱えない理由だ。
円転の境目
先ほどの架空の片道1円コストで、円の支出は157万円、利息のみ源泉徴収後のドル残高を使います。受取額と支出が同じになる円転レートは、この支出を残高で割って求めます。実際の商品への適用は、契約と税の条件を確認してください。
利息控除後のドル残高 = 10,159.37 USD
受取額と支出が等しくなるTTB
1,570,000 ÷ 10,159.37 ≈ 154.53714 円/ドル
片道1円を仮定した基準レート
154.53714 + 1 ≈ 155.53714 円/ドル
ここでTTBは銀行が外貨を買い取る円転レート、基準レートはこの例でコストを加減する前の値です。銀行の説明と同じように、レートの種類を区別します。片道1円はこの銀行の実際の手数料を示すものではありません。
同じ条件を計算機で確かめるには「外貨預金 (米ドル)」を選びます。「預入額 (USD)」を10,000、「預入時の基準レート仮定 (円/ドル)」を156、「年利 (%, 米ドル建て)」を4、「期間 (月)」を6とし、利子所得税の「税引後」をオンにします。入力値はURLに含まれるため、ここで示す架空値を使い、機密の金額は入力しないでください。
この場合、片道1円の損益分岐は155.54円です。この表示はコストを引く前の基準レートの目安で、銀行のTTBそのものではありません。小数点以下2桁の表示なので、そこで厳密に0円になるという意味でもありません。
少し下なら: 基準レートが155.53円、そこから片道1円を引いたTTBが154.53円の場合、受取額から157万円を引いた差額は−73円です。
表示値なら: 基準レートが155.54円、TTBが154.54円なら、同じ差額は+29円です。どちらも円未満を四捨五入しています。これは表示の丸めを確かめるための小さな差で、売買や円転を勧める基準ではありません。
損益分岐の片道コストと上のシナリオ表は連動しません。シナリオ表へ基準レートを入れた値は、そのままでは片道1円を差し引いた受取額になりません。また、実際のTTS・TTBで別に計算するときは、そこに含まれる同じコストをもう一度差し引かないでください。ここでの境目は、送金手数料や為替差益の税金は含まず、利息だけに20.315%を掛けたモデルです。日数・端数処理・実際の提示レートが違えば結果も変わります。
「20万円以下なら非課税」ではない
税務上は、預金利息と外貨を円に戻す際の為替差益を一つの数字にしない。国税庁は、保有する外国通貨を円に交換して生じた為替差益を原則として雑所得(その他)と説明し、未実現の含み益とは区別している。一方、同じ外貨のまま銀行間で預け替えた事例では、その時点で元本部分の為替差益を認識しないとの国税庁の回答がある。円転以外の取引や為替予約付き商品では扱いが異なり得る。
よく聞く「20万円」は税がかからない枠ではない。国税庁の条件では、1か所から給与を受け、年末調整済みで、給与収入2,000万円以下などの人について、給与・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下なら、原則として所得税の確定申告を要しない。国内で源泉分離課税された預貯金利息などは、この20万円の判定に使う合計額には含めない。還付申告など別の理由で確定申告する場合は、その20万円以下の所得も申告が必要と国税庁は補足している。また、横浜市の案内では、所得税の確定申告が不要な20万円以下の副収入でも市・県民税の申告が必要な例を示している。住民税は居住自治体の案内を確認したい。
このページの表は税務申告額の計算書ではない。利息と為替差益の所得区分、取得レート、他の所得、申告要否に迷う場合は税務署・自治体・税理士に相談する。
自分の条件で比較する際の4つの確認点
- 金利を確認する:銀行の現在の年利だけでなく、適用対象、期間、利払方法を読む。ここに書いた4%を入力値として信じない。
- 円への出口を決める:満期後に円へ戻すのか、ドルで使うのか。円転するならTTSとTTBの双方を確認する。
- 元本割れを試す:円高2円・5円など、耐えられる下落幅を外貨預金シミュレーターに入れる。数値は将来の為替予想ではない。
- 表示の範囲を見分ける:ツールのシナリオ表は比較用レートから計算したスプレッド・追加費用なしの理論値。別の「損益分岐」欄は、仮定した片道スプレッドを使う独立した目安であり、シナリオ表に自動反映されない。利息の「税引後」も為替差益の税額は含まない。
外貨定期は資金が必要になった時に自由に解約できるとは限らない。銀行の説明例では中途解約は原則できず、例外時にも適用金利が変わる。比率や「買い時」を一律に決めるより、円に戻す時期、必要資金、許容できる円建て損失、契約書面の条件を先に整理するほうが、1万ドルの試算を自分の判断に役立てられる。