雇用契約書に書かれた額面年収と、毎月口座に振り込まれる金額は違います。年収480万円でサインしたのに、12で割った40万円は入ってきません。誰が引いていったのでしょうか。消えたお金の正体がわかれば、年収交渉も転職の比較もずっと正確になります。
額面と振込額が違う理由
給与明細には「支給」と「控除」の2つの欄があります。額面年収は支給ベースの金額で、実際の振込額はそこから控除を引いたあとのお金です。
控除は大きく2つに分かれます。1つは社会保険料、もう1つは所得税と住民税です。この2つが引かれた金額が、いわゆる「手取り」です。
社会保険料 — 給与から先に引かれる4つ
2026年度に従業員が負担する社会保険料の料率は次のとおりです。保険料は会社と従業員で折半し、下表は従業員の負担分です。
| 項目 | 従業員の負担料率 |
|---|---|
| 厚生年金 | 9.15% (18.3%の労使折半) |
| 健康保険 | 約4.95% (協会けんぽ全国平均9.90%の半額) |
| 介護保険 | 0.81% (40〜64歳のみ、全国一律1.62%の半額) |
| 雇用保険 | 0.5% (一般の事業) |
厚生年金の料率18.3%は固定されています。健康保険は協会けんぽの場合、2026年度の全国平均が9.90%で、都道府県によって料率が異なります。介護保険は40歳になった月から負担が始まる点に注意してください。
所得税 — 源泉徴収と扶養家族
会社は毎月の給与から所得税を先に差し引きます。これが源泉徴収で、国税庁の源泉徴収税額表をもとに計算されます。
同じ年収でも、扶養家族の数によって毎月引かれる税額は変わります。扶養が多いほど控除が増え、天引き額は減ります。所得税には復興特別所得税(所得税額の2.1%)も上乗せされます。毎月引かれた税額は、年末調整で実際の税額と精算されます。
住民税 — 前年所得で翌年に課税
手取りでわかりにくいのが住民税です。住民税は前年の所得をもとに翌年に課税されます。
そのため入社1年目は前年の給与所得が少なく住民税の負担が軽い一方、2年目から本格的に天引きが始まり、手取りが減ったように感じます。住民税の所得割は標準で10%、これに均等割が年単位で加わります。
手取りはどう確認するか
ここまでの控除をすべて適用すると、額面年収480万円の手取り月収はおおむね38万円前後になります。正確な金額は扶養家族の数や非課税の手当によって変わるため、自分で計算してみるのが一番です。
手取り計算機に年収を入れると、社会保険料と税を反映した月の手取りがすぐに出ます。昇給率が気になるならパーセント計算機の変化率タブで前年比を、貯めたお金の利息は利息・住宅ローン計算機で確認できます。
年収交渉は手取り基準で
年収交渉や転職の比較でよくある失敗は、額面だけを見ることです。実際に生活で使えるお金は手取りだからです。
額面が同じに見えても、通勤手当などの非課税分、扶養家族の数、会社の福利厚生によって、月の手取りは数千円単位で差が出ます。提示された年収を比べるときは、必ず手取りに換算してみてください。契約書の大きな数字より、毎月口座に入る数字が本当の収入です。